所長のあいさつ

 今回、幸運なめぐりあわせで橿原考古学研究所に来ることができ、非常に感激しています。橿原考古学研究所は日本で最も古い考古学研究所であり、この地で考古学の業績を積み重ねてきました。その伝統を継承し、さらに発展させていくように、努力していきたいと思います。
 奈良は、国家形成がなされたところです。国づくりや社会をどうしていくのかといったときに、一歩振り返り、奈良では1,300年前、1,400年前に行われたことを参考にすることが、最も重要ではないかと考えます。私は法隆寺に行くと、たたずまいの端正さから国づくりの意気込み、新しい社会をつくるんだという清々しさをいつも感じます。そうした意気込み、清々しさは、今の日本にはなくなってしまいました。大都市圏では様々なところで再開発が行われていますが、どのような国をつくろうとしているのか理念やヴィジョンは全く感じられません。経済原理だけが先行する情けない状況に陥っています。
 しかし、奈良は国家形成の時期に、かつてこういう理念で社会をつくろうとしていたのだということが発信できます。また、理念を学ぶことができる場でもあります。そして日本の国づくりの歴史を具体的に、つまびらかにしていくんだということを肝に銘じて、仕事をしていきたいと思います。
 これからグローバル化の中で、自分たちの住んでいる地域の歴史文化を一人一人がきちんと把握しているかということが、国の支えになると思います。所員一人一人の研究を社会に、世界に積極的に発信していきたいと思います。発信することが、いつまでも清新な日本社会が続くことへの貢献になると思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
所長 青柳正規

奈良県立橿原考古学研究所
所長 青柳 正規