古墳に納められた副葬品のなかの鉄製品は、鉄さびにおおわれているため、一般の方に注目されることの少ない遺物ですが、そのなかでも、長さが1m前後になる刀剣は、高度な製作技術を必要とし、農工具などの鍛冶生産とは別に専門工人がその製作に関与したと考えられる重要な遺物です。その一方では、刀鍛冶の方々によって、日本刀の製作技術が現在に受け継がれていますが、その技術が古墳時代にまでさかのぼるかどうかは、今後も検討を必要とする研究テーマです。
当博物館では、これまでに藤ノ木古墳出土の飾り大刀・剣の復元製作をつうじて、古墳時代の刀剣の姿を再現することで、当時の作刀技術を探ろうとし、刀身とともにその拵えを再現しています。このときには、刀鍛冶とともに、木工・金工・ガラス細工・織物などの技術者の方々に加わっていただきました。その際に、中心的な役割を担われた刀匠の河内國平氏が、今年度の奈良県無形文化財保持者に指定されました。
今回の特別陳列では、この機会に、河内氏の刀鍛冶の仕事の内容についてわかりやすく紹介するとともに、これまでに製作された古墳時代刀剣の復元品を一堂に会し、同時に、長年の研究テーマにされている七支刀の製作技術の復元研究についても、その実験製作の成果品を展示します。
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