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二上山北麓遺跡群(にじょうさんほくろくいせきぐん)[香芝市関屋・穴虫・田尻]
 
二上山北麓二上山北麓
石器材料の原産地
 二上山北麓遺跡群は大阪との府県境に沿って連なる、二上山から寺山にかけての北東側と南西側山麓に分布する、旧石器時代から弥生時代にかけての遺跡を総称している。この地域には二上山の火山活動で生成された火山岩が分布し、その中に石器時代に利器の材料として用いられたサヌカイトというガラス質の石材が産出する。そのため周辺には石材を掘出した跡である掘削坑や、石器をその場で製作した跡などの遺跡を数多く確認することができる。なお、本遺跡群の存在が知られるようになったきっかけは、戦前樋口清之氏が香芝市田尻において発見した田尻(たじり)第2号遺跡(現在の名称はサカイ・平地山遺跡)を、昭和6年に「大和二上石器製造遺跡研究」と題した報告をされたことによる。

初めての旧石器時代遺跡の発掘
 遺跡群の中にある桜ヶ丘第1地点は大和川支流である原川を望む丘陵上に立地している。ここでは以前から地表に散乱していた石器が拾われていたことや、部分的に2つの旧石器時代の文化層が存在している可能性があって注意される存在であった。この場所は昭和50年になって県内では初めて本格的な旧石器時代の発掘調査が行われた記念すべき遺跡である。遺跡からはナイフ形石器や削器などの旧石器時代の石器が出土したが、一般の遺跡と比較して完成された石器は少なく、石器の素材の段階の剥片、石核、製作途中で生じる砕片、加えて石器製作の道具であるハンマーなどが多数出土していて、ここがサヌカイトの原産地にある遺跡としての特徴を示すものであった。

高度な石器製作技術
 ここで明らかにされた旧石器時代の石器の製作方法は、まずサヌカイトの原石を用意し、それを分割して石器の素材となる剥片を剥ぎ取ることのできる石核に整える。その後、一定方向から連続して敲打(こうだ)して、石核から効率的に素材を割り取ることができる。得られた剥片の形を整えたり、必要に応じて縁辺部を加工して石器を完成させる工程を踏んだものであった。この種の石器製作技術は瀬戸内技法と呼ばれ、ほぼ同形・同大の石器素材となる剥片を量産できる点で、優れて高度な技術であり、同様な技術基盤にある石器群は近畿地方から中・四国地方に広く分布している。
これら桜ヶ丘第1地点の出土石器は奈良県立橿原考古学研究所附属博物館の常設展示されている。
当博物館館長 松田真一

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