1300年前の平城遷都に始まった奈良時代は、わが国が国際社会に本格的なデビューを果たした時代でした。当時の東アジアを中心とした国際社会をリードしていたのが、中国・唐王朝です。唐の皇帝たちは、都が置かれた長安(西安市)の近郊に展開する唐皇帝陵(唐十八陵)に眠っています。
 唐皇帝陵の実態は依然多くの謎に包まれていますが、近年、陝西省考古研究院を中心に皇帝陵園や皇族墓の発掘調査が活発におこなわれ、大きな成果を上げています。とくに第9代玄宗の兄、李憲(譲皇帝)の恵陵、第21代僖宗の靖陵は、皇帝陵内部の調査が原則許可されていない中で例外的に墓室が発掘された貴重な調査例です。
 この展覧会では、唐王朝の皇帝と皇族の陵墓にスポットを当て、最新の考古学的成果を用いて、世界帝国の最高権力者が眠る唐皇帝陵の実態に迫ります。

会  期:2010年4月24日(土)6月20日(日)

休 館 日:会期中は無休

入 館 料:大人 1200円(950円)、高校・大学生 700円(550円)、
       小・中学生 450円(350円)、  *()は20名以上の団体料金

  県内の小学校・中学校・高等学校及びこれに準ずる学校の児童及び生徒で、学校教育の一環として教職員の引率のもと観覧しようとする場合は入館料が無料になります。詳細は博物館までお問い合わせください。

主  催:平城遷都1300年記念春季特別展「大唐皇帝陵展」実行委員会
       (奈良県教育委員会・財団法人 由良大和古代文化研究協会・社団法人 平城遷都1300年記念事業協会)
      奈良県立橿原考古学研究所附属博物館

共  催:中国陝西省文物局・陝西省文物交流中心・陝西省考古研究院

後  援:近畿日本鉄道株式会社                               ちらしをみる(PDFファイル)

関連行事

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国際シンポジウム「玄宗皇帝と聖武天皇の時代」
 日時:平成22年5月9日(日) 午前10時~午後4時20分(午前9時30分開場)
 場所:なら100年会館  中ホール  (奈良市三条宮前町7-1)
 定員:434名 先着順で、申込は不要。 満席になり次第締切。

 「唐皇帝陵における陵寝制度の発展と変遷」   張建林氏(陝西省考古研究院副院長)
 「玄宗の兄・唐譲皇帝恵陵の等級について」   張蘊氏(同資料室主任)
 「日中壁画墓における天文図・四神図・十二支像」   韓釗氏(西安碑林博物館副館長)
 「高松塚・キトラ壁画墓と中国の壁画墓」   百橋明穂氏(神戸大学教授)
 「遣唐使と古代律令国家の衣服制度」   武田佐知子氏(大阪大学副学長)
   コーディネーター・菅谷文則(当研究所所長)   通訳・徐光輝氏(龍谷大学教授)

研究講座
 橿原考古学研究所1階講堂  午後1時~午後4時(正午開場) 定員300名、聴講無料、申込は不要。

 5月16日(日) 「唐王朝と皇帝陵」  妹尾達彦氏(中央大学教授)
          「山に因りて陵を為す-唐皇帝陵の実態-」  卜部行弘(当研究所)

 5月30日(日)  「来日した異国の人々」  東野治之氏(奈良大学教授)
           「陶磁器と色の世界」  土橋理子(当研究所)

 6月13日(日) 「中国皇帝陵の流れ」  杉本憲司氏(佛教大学特任教授)
          「発掘された唐の陵墓」  岡林孝作(当博物館)


唐の皇帝・妃の衣装を体験
 日時:会期中の土・日・祝日 午前9時30分~午後4時30分
 場所:当博物館フリーゾーン
 料金:無料
 対象:主に小・中学生(身長が160cmまで対象)

中国の楽器・二胡の演奏会(二胡演奏グループ「蘇楽」)
 日時:5月5日(水・祝)午前11時・午後1時30分(各30分)
 場所:当博物館中庭
 料金:無料。但し、別途入館料が必要。
 備考:雨天の場合は中止

唐楽を楽しむ(天理大学雅楽部)
 日時:6月6日(日)午前11時~・午後2時~(各30分)
 場所:当博物館中庭
 料金:無料。但し、別途入館料が必要。
 備考:雨天の場合は中止

プラネタリウムで古代ロマンを体験-キトラ天文図と唐の時代-
 日時:5月22日(土)・23日(日)・29日(土)・30日(日)・6月5日(土)・6日(日)
 場所:橿原考古学研究所1階アトリウム
                            *事前申込必要(詳細は後日HPに掲載します。)

主な展示品 (☆は一級文物)

世界帝国の威信示す石像                        十四国蕃君長石像(昭陵北司馬門遺跡)

 周辺諸国を次々に征服して唐を巨大な世界帝国に育て上げたのが、第2代皇帝太宗です。子の第3代高宗は、その業績を称えるために、父に帰順した異民族の王14人の等身大の石像を作り、太宗の墓・昭陵に献上しました。今回、2002年に出土した石像の一部を日本で初めて公開します。

 

 

 

 

 

初公開・唐皇帝陵の壁画
               壁画「武人図」(靖陵)☆

 第21代皇帝僖宗の靖陵は、即位した唐皇帝の陵として唯一、1995~96年に墓室内部の発掘調査が行われました。陝西省考古研究院では、墓室に描かれていた壁画を剥ぎ取り、順次修復作業を進めています。今回、修復が完了した「武人図」を、世界に先駆けて公開します。
巨大青龍と白虎                     壁画「青龍図」・「白虎図」(恵陵)(模写)原品☆

 第9代玄宗の兄李憲は、玄宗に位を譲ったことから「譲皇帝」の称号を贈られ、その墓である恵陵も皇帝陵の規格に準じて造営されました。恵陵の墓道壁面に描かれた青龍図と白虎図は、長さ7mという巨大なもので、皇帝陵にふさわしい偉容を誇ります。航空機での輸送が困難であることから、今回の展覧会のために、実物大の模写を制作しました。
  壁画「青龍図」 
  壁画「白虎図」
裸足でひれ伏す文官                                     跪拝俑(恵陵)☆

 2000年に恵陵から出土した跪拝俑は、文官がひれ伏す姿を表した珍しい俑です。衣服の裾から足の裏が透けて見え、靴を脱いで裸足になっていることもわかります。赤い朝服を着て笏を持った高位の文官が、皇帝にひれ伏す姿なのでしょう。



唐代工芸技術の粋
               銀背八角鏡(李スイ墓)☆

2001年に初代高祖の玄孫李スイの墓から出土した副葬品12点を一括で初公開します。 朱書墓誌、螺鈿八花鏡、銀背八角鏡、銀海老錠、三足銀壺をはじめ、いずれも高度な工芸技術がうかがわれる逸品です。 銀背八角鏡は径わずか6㎝の小さな空間に、精緻な文様を凝縮しています。


                  *スイは「イ」にんべんに、「垂」
躍動感あふれる優れた筆致                             壁画「馬球図」(李ヨウ墓)☆

 2005年に発掘された初代高祖の曾孫李ヨウの墓に描かれていた壁画です。差し渡しが3mの大きな画面に、馬球(ポロ)に興じる人々を、今にも動き出しそうな流暢な筆致で描いています。唐の貴族の間で流行した馬球は、日本にも「打毬」として伝わりました。

                                                        *ヨウは「巛」まがりかわに、「邑」