5 縄文社会の情報伝達
遠隔地との交流

 宮の平遺跡の出土品には、遠く離れた地域との関係を窺わせる遺物があります。特に土器には文様の中にほかの地域の特徴を取り込んだものや、一部の特徴を取り入れて彼我の土器を折衷したようなものも存在しています。一例を挙げると、早期の土器のなかには南九州地方に分布している平栫(ひらがこい)式土器のデザインを借用したと思われる土器470・471や、北越の三十稲場式土器に用いられるような文様要素をもつ土器1316などがあります。当時、われわれの想像を超えた地域相互の交流があった証ではないでしょうか。

光沢のある特殊な礫

宮の平遺跡で多数確認された配石遺構のひとつから、掌に収まる大きさの光沢のある礫が2個見つかりました。配石は下に存在した穴の上に並べられたもので、中央に大切に置かれていました。この石材は吉野地域にはなく、最も近くでも北陸の福井県でないと得られないということです。この遺構は墓とその標識ではないかとみていますが、被葬者が遠隔地から取り寄せ、生前によほど大切に扱っていたものかもしれません。


| 1 2 3 4 5 |
南九州との交流を示す土器
(左470,右471)
土坑107上面出土の礫
Copyright© 2005. The Museum,Archaeological Institute of Kashihara,Nara Prefecture. All Rights Reserved. Last update: 2005. 6.15