現在の吉野郡と五條市(古代の吉野郡と宇智郡)は吉野川流域という点で、奈良盆地とは異なる環境にあります。その為、古くから盆地部とは異なる文化が営まれました。例えば吉野郡では、吉野川流域の縄文時代を代表する宮滝遺跡において独特の土器様式がみられます。また、飛鳥・奈良時代には離宮とされる吉野宮が営まれ、持統天皇などは飛鳥の地から度々訪れています。さらに平安時代には、末法思想によって藤原道長ら平安京に住む貴族が金峯山(大峯山)に経塚を営みます。これらは都人たちが吉野を神聖な場所とみなし、信仰していたことの表れと考えられます。一方宇智郡は、古墳時代より吉野川を介して他地域や朝鮮半島、大陸との交流の大和における玄関口となっており、出土遺物にはその影響がうかがえます。そして独特な横穴式石室の形態も特徴です。また、古墳時代以降には須恵器や瓦の生産地となっており、瓦は飛鳥の諸寺院に供給されました。
以上のように今回の特別展は、吉野・宇智の地域にみられる様々な交流と信仰にスポットを当て、考古学の視点から古代に遡ってたどることにします。 |