香芝市北今市古墳群

現地説明会資料資料(2005年9月4日)


調査機関 奈良県立橿原考古学研究所
所在地 香芝市北今市3丁目
調査原因 道路(中和幹線)建設
調査面積 約2,000u(平米)
主な遺構 北今市1〜3号墳
現地説明会 9月4日(日) 午前10時〜午後3時  

1.はじめに
 北今市古墳群は、香芝市北今市3丁目に所在する古墳時代後期の古墳群で、葛下川西岸の南から北へのびる低い丘陵上に3基(北今市1〜3号墳)の古墳が築かれています。葛下川の流域は、東の馬見丘陵と西の府県境の丘陵に挟まれた狭い谷間で、王寺町本町の達磨寺1〜3号墳、王寺町畠田の畠田古墳、香芝市平野の平野1〜3号墳・平野塚穴山古墳など、川の西岸に古墳が点在しています。いずれも古墳時代後期から終末期の古墳で、前期・中期にさかのぼるものは見られません。北今市古墳群もその1つで、南に接する下田小学校付近で確認されている2基の古墳(いずれも消滅)とともに小規模な古墳群を形成してます。今回、中和幹線建設に伴って平成17年5月16日から1〜3号墳の調査を行っており、これまでに次のようなことが明らかになりました。

2.発掘調査の概要
   1号墳 丘陵稜線の東側に築かれた直径約20m、高さ5mの円墳です。埋葬施設は、南南東に開く横穴式石室で、盗掘のため天井は破壊されていますが、下半はよく残っています。石室の規模は、全長約11m、玄室長5m、幅1.6m、高さ2.8m、羨道長約6m、幅0.9mです。羨道の南には石を用いない墓道が続き、羨道から墓道にかけて排水溝が設けられています。玄室は長さに比べ幅が狭く、規模の割りには小振りな石材を用いています。
 玄室内には、凝灰岩製の組合式家形石棺2つを南北に並べて納めています。石棺の構造はほとんど同じで、蓋石3枚、側石6枚、底石4枚からなっており、南棺は長さ175cm、幅70cm、高さ50cm、北棺は長さ180cm、幅60cm、高さ50cm(身の内法)です。蓋石は盗掘時に割られていますが、側石・底石はほぼ完存しています。
 盗掘のため埋葬時の状態を保つ遺物はありませんが、棺内に納められた遺物として、北棺から琥珀玉、銀製空玉、ガラス小玉(数個づつ)が、南棺から鉄鏃(20以上)、銀製耳環(1)が出土しました。棺外では、北棺の東から須恵器杯、高杯、脚付壺がやや集中して出土しており、その他各所から鉄刀(2)、金銅製単鳳環頭(1)、馬具の破片(鞍・鐙・轡)等が出土しました。また羨道の南端から墓道にかけて、須恵器甕、脚付壺、高杯の破片が多量に出土しています。なお、墳丘の北西裾で円筒埴輪棺が検出されましたが、その型式から古墳よりも古いものと思われます。したがって1号墳は古い古墳を破壊して築造された可能性も考えられます。

 2号墳 丘陵稜線の西側に築かれた一辺15m、高さ3.5mの方墳で、東側に幅4〜5mの壕をめぐらせています。南側は3号墳の壕をそのまま利用しており、築造は3号墳より新しいといえます。石室はなく、凝灰岩製の組合式家形石棺を墳丘内に納めています。石棺は長辺を東西に向け、南北2つ平行して納められていたようですが、北棺は盗掘で破壊され詳細不明です。南棺は未盗掘で完存しており、蓋石3枚、側石6枚、底石4枚からなっています。大きさは、長さ160cm、幅50cm、高さ37cm(身の内法)です。蓋石は形状が統一されておらず、石材寄せ集めの観があります。南棺の棺内には、頭を東に向けた熟年男性と4〜5歳児の2体分の人骨が遺存しており、成人人骨の頸部から滑石製小玉8個、体の右側から鉄刀1本が出土しました。また石棺外の北側から、蓋をした直後に置かれたと思われる鉄鏃8本が出土しています。

 3号墳 丘陵稜線の西側に築かれた直径約10m、高さ3mの円墳で、古墳の東側に幅2mの壕をめぐらせています。埋葬施設は南南西に開く小型の横穴式石室です。石室の規模は全長4m、幅1.1m、高さ1.5mで、床面は礫を敷いています。石室の南に墓道が続きますが、石室との境で東側を狭めており、石室の入口(玄門)を意識していることがわかります。盗掘のため石室内からは鉄器の破片が少量出土したのみです。その他には墳丘の北西斜面から須恵器杯が数点出土しています。

3.まとめ
 北今市古墳群は、1号墳→3号墳→2号墳の順で、6世紀後半から7世紀初めにかけて連続して築造されたと考えられます。古墳の規模、構造、出土遺物から、古墳の築造者は一連の地元有力者と推測されますが、古墳の規模、構造が3基とも異なっている点に特徴があります。特に2号墳は、墳形が円墳から方墳に、埋葬施設が横穴式石室から石棺直葬に変わっており、この段階で古墳の築造に何らかの規制がかけられた可能性も考えられます。以上のように、北今市古墳群は継続して築造された一連の古墳の中で、その構造の変遷がたどれる事例といえます。

北今市古墳群位置図
第1図 北今市古墳群位置図

墳丘測量図
第2図 北今市1〜3号墳測量図(調査前)

1号墳玄室
写真1 1号墳玄室(南から)

北今市古墳群全景
写真2 北今市古墳群全景(東から。手前が1号墳)

1号墳石室全景
写真3 1号墳石室全景(南から)

3号墳石室
写真4 3号墳石室(南から)

2号墳全景
写真5 2号墳全景(東から。左が南棺、右が北棺盗掘坑)

2号墳南棺蓋石
写真6 2号墳南棺蓋石(上が南)

2号墳南棺遺体検出状況
写真7 2号墳南棺遺体検出状況(上が南)

本資料は、奈良県立橿原考古学研究所入倉徳裕・十文字健が作成した。


このページの先頭へ
現地説明会資料一覧に戻る
トップページに戻る