ヒエ塚古墳(外堤)発掘調査 記者発表資料(2002年7月29日)


調 査 地天理市萱生町ヒエツカ
調査原因県道(天理環状線)に付帯する農道の拡幅工事
調査期間平成14年6月17日〜7月末日
調査面積630u

はじめに
 奈良県立橿原考古学研究所は、平成14年6月17目より、県道工事に付帯する農道の拡幅工事に伴い、天理市萱生町のヒエ塚古墳(全長130mの前方後円墳)北側の外堤相当部分の発掘調査を実施してきた。その結果、ヒエ塚古墳に関わる可能性がある遺構を検出したので、ここに報告したい。

調査の概要
 調査区は2力所で、東側をAトレンチ、西側をBトレンチとする。
 Aトレンチでは地表下50cm〜100cmほどで地山を検出した。西よりの箇所では、旧水田・畑の石垣、中央部では素掘り小溝などを検出した。こうした状況から、中世〜現代に至る水田化などの改変によって、ヒエ塚の外堤は大きく削平されていると判断される。
 Bトレンチでは、地表下60p〜120cmほどで地山面となる。一部では、周辺の畑などより高い箇所があり、Aトレンチに比べると削平の度合いが小さく、外堤が残存していると判断される。そして、このトレンチの中央やや西よりで、南東から北西へ向かう溝(SX05)を検出した。溝の幅は上端で8.8m、深さは1.2mを測る。溝の埋土は暗灰色土・黒色粘土で、その埋土中に人頭大から幅65cmほどの大きな石が含まれていたほか、コンテナ8箱分(約800点)ほどの士器が出土している。また、その北西部には径2.3m・深さ1.0mほどの窪みがあり、そこに上記の石ともに土師器壷・甕・高杯などの完形品や破片が比較的まとまって出土している。石や士器は、潮こ流れ込んだものが多いと推定されるが、窪みの部分の士器については、何らかの祭祀に関わるものである可能性もある。石については、原位置を保っているものが全くないため、本来のありかたは不明だが、古墳外堤に使用されていた石が転落したものである可能性がある。

調査区配置図
調査区配置図


調査区全景
調査区全景


遺物出土状況
SX05遺物出土状況


まとめ
 今回の調査では、ヒエ塚古墳北側の外堤の一画を調査したにとどまり、また、削平が著しいため、Bトレンチで検出した溝SX05の性格については不明な点が多い。溝は外堤を分断する形で形成されており、古墳に伴うものであるとするなら、周濠の水を外側へ排出する機能をもっていたと考えられる。この溝から出土した土器は、布留0式の様相を示しており、古墳に伴うとすれば、ヒエ塚古墳の年代が当該期まで遡る可能性がある。ただし、こうした溝の類例がほとんどみられないことや周辺の集落のありかたなどから見て、この溝が古墳に先行するという可能性も考慮しておくべきで、周辺の調査を待って結論を出す必要があろう。